不吉な女

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心なしか声が少し震えている。 女はやはり動かない。 俺もそれ以上何も言わなかった。 そして恐れていたことが起こった。 対向車線を飛び出したトラックが、反対車線の乗用車に激突した。 前の二度の事故もひどかったが、この事故はそれ以上だった。 乗用車の方は確実に人が死んでいるだろう。 女が笑う。大きく耳障りな声で。 そして言った。 「今日はもうこれくらいでいいかな。運転手さん、いくら」 料金を払うと、女は降りて行った。 軽い足取りで、まるで狂ったように笑いながら。        終
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