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私達は、クリスマスマーケット会場と変わらないくらい、人でごったがいしている大通りの人混みに紛れた。
街路樹もクリスマスライトアップがされ、どこに行っても人は多い。
私達2人だけが息を切らす。そんな私達に、周りの人は興味もなく、自分達の世界に入りこんだまま通り過ぎていく。
それを確認すると私達は顔を見合わせ安心した。
「これ……」
悠太は、わたしにそっとリングケースを渡す。
「ありがとう……何かごめんね……」
「ほんとだよ!せっかくかっこよく色々考えてたのに……うそうそ。ははは。もういいよ。あんな所でプロポーズとか思ってもみなかったけど……。サプライズにはなったよね?」
「確かに予想外だった……」
「今でも思い出したらドキドキするし!」
私達は目を合わせ、悪戯した後の子供のように声を出し笑う。
「腹減ったし、寒いし、予約してるレストラン行こう」
「うん!」
悠太は自分の両手をポケットにしまうと、前を向き歩き始める。
私はすぐに、悠太の横に並んだ。
無意識にリングケースを握りしめたまま、悠太の左ポケットにそっと手を入れた。
悠太は、肩を揺らすがすぐに優しい目で私に微笑むと、ポケットの中にある大きな手で私の手をしっかり包み込む。いつもより近くにいる感じがした。
「寒いからね?」
「だな?」
いつの間にか小さな粉雪が、白い天使のように舞い落り、街全体を白く染めていった……。
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