序章

1/2
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

序章

 ──十二月三十日、晦日(みそか)。  真冬とは思えない温かさだ。エブリスタウン教会の年若き神父は、今日が吉日とばかりに、年末の大掃除に励んでいた。  梯子を使ってステンドグラスをピカピカに磨き、座席はおろかパイプオルガンの鍵盤まで埃一つない状態にしたのち。ふと目についたのは、入口から伸びる長絨毯だった。 (一体どれだけ洗っていないのだろう)  この神父は新米で、熱心で、そして知識が足りていなかった。 『教会の床下には悪魔が住んでいる』  古くからの言い伝えである。例えばバージンロードの赤い絨毯は、花嫁を床下の悪魔から守るために敷いたのが始まりだった。  そう、長絨毯は悪魔を封印するためのもの。しかし若い神父は知らなかったのだ。  無知は罪。斯くして、前代未聞の大事件は起きてしまった。若き神父が絨毯を剥がしたその刹那、床下から無数の悪魔が飛び出した。  そして今、教会は悪魔の巣と化している──。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!