6:『傲慢』

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「少し休みませんか?」 「いや、このまま行く」  休憩の提案をカナは退けた。さっさと終わらせたかったからだ。  リクの強力な剣技に加えて、カイトや眼鏡モブの攻撃魔法もあった。女達の能力はサポートに長けている。そして何より、勇者としての自分の力は絶大だ。どんな悪魔が待ち構えていようと楽勝だと鷹を括っていたのだろう。  ところが、だ。  最上階で立ちはだかったのは確かに、今までの相手達とは比べ物にならないほど強大な魔力を持つ上級悪魔だった。  それでも、勝てたかもしれなかった。全力を出せていたならば。  全員、飲まず食わずでの連戦に疲弊しきっていたのだろう。悪魔が唱えた眠りの呪文(ララバイ)を跳ね返す力はなく、ほぼ全員がその場に倒れ込みイビキを掻き出したのだ。  ちなみにカナは深刻な睡眠障害のため効かなかったが、さすがの勇者でも一人では太刀打ちできない。何しろカナは、怒らせないようにと周囲に気を遣わせる「眠れる破壊神」だ。そこまで連続で雷が打てるほど、不快にさせられた思い出を持ち合わせていない。  カナのパーティーは全滅した。傲慢故の油断によって。
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