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「君に会いたい」 「じゃあピクニックにいきましょうか。お弁当作るわね」 そんな会話をした翌日、風香は空と同じくらい真っ青なビニールシートを地面に広げた。春の風が草の薫りを運んでくる。  中央に置いたバスケットの中にはから揚げやおにぎり、ポテトサラダなどがぎっしりと詰められていた。色合いも美しく、食欲をそそる。 「大学の近くにこんな公園あったんだ」 「人は空き地を見つけたら公園か駐車場にしたがるものよ」 「偏見がすごい。けどほんとよく見つけたね」 「講義の空き時間に探検してたら見つけたの。穴場よね」  彼女の言う通り、こぢんまりとした公園には誰もいなかった。  僕たちの通う大学には構内に大きな広場がいくつかある。似たような場所をわざわざ構外に求めていないのだろう。  風香はから揚げに爪楊枝を刺した。楊枝の持ち手には三色の小さな国旗がついている。 「かわいいな、その旗」 「こういうのが幸せなのよね」 「爪楊枝が?」 「思い出はカラフルなほうがいいでしょ」  風香は国旗を刺したから揚げを静かに持ち上げた。そのまま僕の口元へと差し出す。  僕は一瞬迷ったが「穴場でよかったわね」と彼女が言うので、口を大きく開けた。 「自信作なんだけど」 「代表作でもいいと思うよ」 「おいしい?」 「最高」  から揚げを頬張りながら答えると、風香は嬉しそうに微笑んだ。  穴場でよかった、と思う。今の僕の顔を誰かに見られたくない。 「お弁当ごちそうさま。全部おいしかった」 「彼氏に会いたいなんて言われたらはりきっちゃうわよ」 「言わせてる自覚は?」 「自分の言葉には責任持ってよね」  素知らぬふりをする風香を見て苦笑する。  だけどまあ僕だって嫌々言ってるわけじゃない。 「今度は探検にも誘ってくれよ」 「そうね。考えておくわ」
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