ゴールデン・バージニア

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「最後まで聞いてくれ、そしてこう後付けろ」 「ならず者は我々マコーリーが責任もって潰すと」 「そんなものが政府に通用するのか?」 「これだけじゃ足りない。政府の保身を考えてのことで少女を一人救い、それを政府が助け出したことにして英雄にするんだ」 「その後列車を横の湖に沈め我々がいた痕跡を抹消する」 「政府がマコーリーのせいにしたらどうするんだ。それこそ一巻の終わりだぞ」 「その時は真実を世界にばらまいてやればいい。政府との黒い写真は大量に保持してるし、生憎政府を憎む連中なんてそこら中にいるからな」 「...」 「バグパイプは今日乗客を殺すんだろ。早く仕事にかかれ」 「...っ」 「責任は取らないぞ、私は」 その後ルナは事件前日の晩、政府に電報を送った。 ___________________ [終幕:貴族(ノービリティ)] 「ルナ!」 その掛け声とともにルナが床下から飛び出し、爆破の被害を受け無かった男3人を拳銃で貫いた。 「(私らが隠れていた床下から...ッ!設計士を買収して作らせた空間に閉じ込めたはずなのに...ッ!)」 「叔父貴から伝えられてなかったのだろう。その指輪は敵を欺く為の最終手段さ」 「がっ...足が....ッ!」 フィンチは爆破によってちぎれかけた足を必死に引きずりながら後ろに後退する。 床のカーペットとの摩擦で皮一枚の所がちぎれた。 フィンチはそれを見て大声で叫び散らしたのだった。 「正直俺には貴族が死のうがお前が裏切ったことなぞどうでもいい」 「仕事は必ずやり遂げる。それだけだ」 「はぁ...っはぁ...っ忘れたの...?マコーリーは手出してはいけなかったッ!そのうち政府が飛んできてあんたら没落貴族を刈り取るわッ!」 「それには及ばない。こっちは大丈夫だ」 「はっ、なにをふざけて...ッ!」 「悪いがお前に説明してる時間も労力もない。とりあえずこの場を立ち去らなければ」 「今更逃げたって、政府からは逃げられないわッ!覚悟しろッ!」 「言ってなかったな。じきにこの列車は湖に沈む」 「なっ...」 「そんなことしたらお前達も死ぬことになるわよッ!」 「俺達は最後尾に移動しブレーキをかける。その際に第4車両と第5車両を切り離すつもりだ」 「...ッッ!」 「ついでにお前も溺れさせる予定だ。これで俺らが関わったことにはならない」 「念の為、四肢を切断しておくぞ」 「や、やめろ...やめろ...!」 「ルナ、第2車両に出刃包丁があったよな。取ってきてくれ」 「わかった」 「お前達狂ってる...!マコーリーなんかに近づくべきじゃなかった...!」 「そりゃそうだ、ドロ街を管轄している貴族だからな」 「それを甘く見たお前は本当に愚か者だよ」 ルナが第1車両に戻ってくる。 「取ってきたぞ。小さいのしか無かったが」 「構わない、始めよう」 バチンッ バチンッ バチンバチンッ 「がぎゃぁぁあぁああッッ!」 「肩から切断しろ。上腕が残ってると浮かんでくる可能性がある」 「わかった」 バツンッ バツンッ 「ひゃっ...ッがぅぅ...ッッ」 「終わったな」 「あぁ」 「ではそろそろ消えよう。破壊した線路にもうすぐたどり着く」 コツ コツ コツ コツ 「では姫君、参りましょう」 「い、嫌...!貴方達となんて行きたくない!」 「貴方がそんな人だったなんて...!」 「姫君、私達の醜悪な部分を見せてしまって本当に申し訳ない」 「しかしそれで命が助かったのです。儲けとは思いませんか?」 「貴方らは自分の家の為動いただけ!私をそんなことに巻き込んだことは決して忘れません!」 「許さない...絶対に許さないッ!」 「ルナ、姫君を第5車両に連れていけ」 「ああ」 「嫌ッ!離してッ!離せッ!______」 グローザは丁寧に第2車両への戸を開ける。 「それではご婦人。良い旅を」 「待て、置いてくなッッ」 「置いてくなぁぁあああああッッ!!」 ___________________ その後、政府は唯一生き残った少女を英雄としてメディアに公表させ、国内にばらまいた。不当な政府の印象操作に疑念を抱く声は多く上がったがこの事件もやがてアフタヌーンティーの話題にされ、忘れ去られた。 メアリーはあれ程真実を世界に知らせると憤慨していたが、政府にロボトミー手術らしきものを施されてかその怒りは収まりベアリング家の一室で静かに暮らす事となった。 マコーリーはというと、一切の関連がされてないとされドロ街は相変わらず没落貴族が支配するスラムのままである。 フィンチ・コロランドはというと、リーダーの不在によって組織は崩壊し罪人達はまたドロ街へと戻っていった。 フィンチのその後は言うまでもなく、誰にも発見されることの無いまま魚の餌になった。今でも彼女はあの湖の底にいるのだろう。 誰にも語られることのなかった物語、[ゴールデン・バージニア]はこれにて閉幕。
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