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巻き戻される運命
「シャルマン様、とうとう結婚式ですわ」
「ああ、レティ。愛しい君と結婚できる、僕はとても幸せ者だ」
その日は私、レティ・アマンド・アルメニアがこの国の第一王子であり、王太子であるシャルマン・ソルシエール・プリエールに嫁ぐことになっていた。神殿でお互いを愛し合う誓いをたてて、それから豪華絢爛な結婚式をあげていた。夜は披露宴が開かれることになっていた、私はとても幸せだと思っていた。これから私を待ち受ける運命なんて知らなかった、何も知らずに私は自分は幸せだと思っていた。
そうして王太子妃になった私は銀の髪に蒼い瞳を持っていた、シャルマン様は金色の髪に緑色の瞳を持っていた、私は二人の間に子どもが生まれたらどんな子どもになるだろうと思った。そして私は結婚を祝う色んな臣下からの挨拶を受けることになった。その最初の方がちょっとだけ他の貴族と違っていて変わっていた、長い黒髪に左目は眼帯をしていて赤い右目を持つ彼は一番に先に私たちに挨拶にきた、だからシャルマン様がまずその方に話しかけた。
「叔父上、貴方に来ていただけるとは光栄です」
「甥の結婚式だ、それでは王太子と新たな王太子妃に祝福を」
そう言ってその方は次の貴族に場所を譲って自分の席に戻った、シャルマン様は丁寧に叔父上に挨拶をしたがその後こっそりと私に向かってこう言った、あんな叔父上など来なくても良かったんだ、私は彼は礼儀正しい方だったし、それに実の叔父上様ならシャルマン様の結婚式に来て当然ですと言った。だが、シャルマン様は私の言葉を否定した。
叔父上は父の弟で公爵だが辺境で暮らしている、そしてついた二つ名が『煉獄への誘い手』だ。確かに辺境を更に開拓して発展させた人だが、煉獄から呪われていると評判で結婚もしていないんだ。それに叔父上に上手いことを言われてついていって、帰ってこなかった家臣は山のようにいるんだ。あんな不吉な男なんて僕の結婚式に相応しくないとシャルマン様は言っていた、私にはシャルマン様の叔父上という方は礼儀正しく、とてもそんな酷い二つ名を持つ男性には見えなかった。
「それでは僕と踊ろう、レティ」
「ええ、シャルマン様」
そうして王家主催の披露宴で私とシャルマン様はファーストダンスを踊った、国王陛下や王妃さまもその様子を見守っていて、そして爵位の高い順に皆もそれぞれダンスを始めた。それから私はダンスを踊ったり、シャルマン様と一緒に隣国の使者とお話をしたり、沢山の貴族の相手をして疲れてしまった。だから私は本当に少しだけの間、こっそりと一人になってバルコニーで休もうとした。
「これは王太子妃、こんなところに一人で来ては危険だ」
「まぁ、シャルマン様の叔父上さま」
「ヴォルトだ、ヴォルト・エスクロ・プリシオンという、俺を恐れぬ勇気ある王太子妃よ」
「どうして私に貴方を恐れる必要があるでしょう、貴方は私の夫であるシャルマン様の叔父上です。それに辺境をとても発展させた方だと伺いました、その左目も辺境で失くされたのですか?」
「ああ、辺境には魔物が多いからな。この左目は十七歳の時に魔物に潰されてしまった、しかしいいのか? 『煉獄の誘い手』と話していると、君も煉獄へ落ちることになるぞ」
「今お聞きしたとおり辺境とは、魔物や他国からの敵が多い地域だと思います。『煉獄の誘い手』なんて気のせいでしょう、大変な環境で働く者に死人が多いのは誰のせいでもないことです」
私の言葉を聞いてヴォルト様は微笑んだ、その笑顔はとても力強い実力を伴うものだった。まだ十五歳の私なんてヴォルト様の前では子どものようなものだった、でもヴォルト様に年齢を聞くとなんとまだ二十歳だと言われた。辺境で相当にこれは苦労したのだろうと、私は思いそれでも辺境を発展させたこの方を尊敬した。
「レティ、レティ、どこだ?」
「まぁ、いけない。私はシャルマン様のところへ戻りますわ」
「ああ、そうするといい。俺は君が王太子妃になって、不幸にならないことを祈っている」
「ありがとうございます、ヴォルト閣下」
そうして私はシャルマン様と披露宴に戻っていった、やがて披露宴も終わり私たちも退席することになった。そしてシャルマン様との初夜が待っていたが、さすがに私も初めてのことで緊張していた。でも私はその初夜が始まる前に、シャルマン様から驚くようなことを言われた。
「なぁ、レティ。側室を三、四人入れても良いだろう?」
「なっ、何をおっしゃっているのです!? シャルマン様は私と結婚したばかりです!!」
「ああ、確かに王家と君の公爵家が婚約をしたから君とは結婚した。でも僕はもっと自由奔放な美しい女性が好きなんだ、君は顔と体はまぁまぁだが大人し過ぎるから王太子妃の仕事をしているといい」
「そっ、そんなこと国王陛下もお認めになりません!!」
「いいや父上も母上も僕に甘いから認めてくれるさ、なんだか君を抱くのも面倒になってきたな、他の女性を呼ぶから君は自分の部屋に戻ってくれ」
「ええっ!?」
私はシャルマン様の部屋から追い出された、そうして私は自分の王太子妃の部屋に戻るしかなかった。その次の日から私は王太子妃として執務はしたが、決してシャルマン様の寝室に呼ばれることは無かった。彼はすぐに四人の側室を迎えいれて、そして毎晩違う側室を抱いて楽しんでいた、私は自分の立場の惨めさに涙を零した。
シャルマン様にとって私は、ただの執務をしてくれる道具に過ぎなかった。そんなある日のことだった、私が息抜きに自室のバルコニーから外を眺めていたら、後ろから強く押されて誰かに突き落とされていた。私はかなりの高さから落下したが辛うじて息があった、ドレス姿の誰かが私の部屋から消えるのが見えた、そこまで見てしまってから私は何も分からなくなった。
「…………私はシャルマン様と結婚するべきではなかったわ」
次に目が覚めた時、私は思わず自分の今の境遇を嘆いて本音を漏らした。だけど誰もそれを咎めなかった、王太子妃の部屋に私はいるはずなのに誰も傍にはいなかった。それを私は不思議に思って、ベッドから出ようとしたら転んでしまった。そうして私は自分の小さな手を見た、私は三歳程度の子どもに戻ってしまっていた。
「ここは公爵家の、以前の私の部屋だわ」
私はそう気づいて鏡を覗き込んでみた、何回見ても三歳ほどの幼い私がいるだけだった。私は最初は悪い夢を見たのかと思った、でも夢にして済ますにはあまりにも生々しい現実のような夢だった。だから私はよく注意してこれからを生きていくことにした、もしもシャルマン様がまた同じような方だったら、私は絶対に婚約などしたくなかった。
「レティ、お前に婚約の話がきているよ」
「お相手はどなたですか、お父さま?」
「第一王子のシャルマン様だよ」
「…………私はシャルマン様を知りません、だからそう簡単に婚約したくありません」
「それも、そうだね。それじゃ、今度王宮のお茶会に行こう」
「はい、お父さま」
前回の私はお父さまの言うとおりに、まだ会ったこともないシャルマン様と婚約をした。でも今回はまずシャルマン様を実際に見ておきたかった、それでもし彼が私の好まない子どもだったら婚約を断るつもりだった。私とお父さまは王宮のお茶会に招かれたが、まぁシャルマン様はとんでもない子どもだった。
「なんだこの地味でつまらない子どもは? まさか僕の婚約者候補じゃないだろうな」
シャルマン様はお茶をわざと零して侍女を困らせ、そして私のことを地味でつまらないと言って笑った。それから彼は侍女たちのスカートをめくったり、お茶菓子を私に投げつけたりと散々なことをしでかした。そんなシャルマン様を止めた人物がいた、それは黒髪に赤い瞳をした綺麗な男の子で、シャルマン様を押さえて彼に向かって怒った。
「シャルマン!! お前のために開かれたお茶会だぞ、なのにお前の態度はあまりにも失礼だ!!」
「煩い!! ヴォルト叔父上!! 叔父上なんかどこかへ行っちゃえ!!」
「すまない、皆。俺が代わりにここにいる者に詫びる、シャルマンは王の元へ連れて行くから、どうかお茶会を楽しんでくれ」
「放せ!! いっつも叔父上は僕の邪魔をする!! この王家の出来損ない!!」
そんなシャルマン様を捕まえたヴォルト様は八歳くらいだった、でも八歳とは思えないほど礼儀正しく私たちに心からお詫びをしてくれた、ヴォルト様はそのままシャルマン様を本当に、兄である王のところへ連れていったようだ。後日、国王陛下からじきじきに私たちにお詫びの手紙が届いた。私はお父さまにシャルマン様との婚約は断ってと言った、お父さまも納得して私の言葉に頷いてくれた。
そうなると私には新しい婚約者が必要だった、公爵家の娘だった私のところには山のように縁談が舞い込んできた。私は未来を夢みて知っていたから、どの子どもがどういう男性になるのかを知っていた、だからこの人は浮気者、この人は放蕩者、この人は酒狂いとどんどん婚約者候補を減らしていった。すると世の中には碌な男がいないのか、ほとんど婚約者候補が残らなかった。
そして私はたった一通の縁談の申し込みに手を止めた、それはヴォルト様からの縁談の申し込みだった。私はその縁談の申し込みに思わず自分の顔が赤くなるのが分かった、ヴォルト様は先日も会った時のように礼儀正しくてお優しいお方だった。それに今は八歳のヴォルト様はもうすぐ辺境へ行ってしまうはずだった、私はそれをとても寂しく思い同時に胸がひどく痛んだ。
「お父さま、お母さま。私がヴォルト様と婚約したいって言ったら怒る?」
「あらっ、ヴォルト様ね。この前のお茶会でも礼儀正しくて、お優しい方だったそうね」
「確かに礼儀正しくてお優しいお方だ、でも彼はもうすぐ公爵として辺境へ行ってしまうよ」
「それでもいいの、ヴォルト様と婚約できるなら、私が辺境についていくわ」
「まぁ、そんなにヴォルト様のことが気に入ったの。それじゃ、私には反対できないわ」
「可愛いお前を辺境にはやりたくないが、そこまで覚悟しているのならその婚約を受けよう」
こうして私とヴォルト様は婚約することになった、お父さまがそう返事を書いて送るとすぐにヴォルト様は私の公爵家に挨拶に訪れた。そうしてとても礼儀正しくお父さまやお母さまとお話をしてくれた、それにもちろん私とも真剣にお話をしてくれたのだ。私はまだ三歳だったのに、ヴォルト様はそんな子どもの私にも、礼儀正しくそして優しく話をしてくれた。
「俺との婚約を受けてくれてありがとう、レティ」
「どっ、どういたしまして。ヴォルト様」
「だけど俺はもうすぐとても危険な辺境に行くんだ、だから俺と結婚できる年齢まで、レティは両親と安全な領地で過ごすといい」
「いっ、いいえ。ヴォルト様、どうか私を一緒に辺境へ連れていってください」
私は自分が我儘を言っているのは分かったが、そんなに長い間ヴォルト様のお傍を離れたくなかった。それに私はヴォルト様が左目を失くすのを防ぎたかった、まだたった三歳の私に何ができるかは分からなかった、でも私には王太子妃の教育で覚えた知識があった。ヴォルト様が十七歳の時に左目を失うことを知っていた、これは私にとっては大事な知識だった。
「君は本当に勇気があるね、レティ」
「そっ、そんな私はただヴォルト様の隣にいたいだけです」
「俺が辺境に行くまで二年ある、だから二年後もレティの気が変わらなかったら、その時は俺と一緒に辺境へ行こう」
「はっ、はい。ヴォルト様、約束ですよ」
それから二年間の間、私は勉強を頑張った。王太子妃になる為に私は一通りの勉強はしていたが、それをもっと詳しく辺境をどう開拓していくか学んだのだ。そんな私の様子を見てお父さまは勉強に協力してくれた、お母さまも私がもう女性に必要なマナーを学び終えているのを認めた。
そしてお母さまは私のために、特別に辺境に詳しい家庭教師をつけてくれた。そうやって勉強をする私のところに、ヴォルト様は頻繁に通ってきてくれた。そうして話すことは何気ない日常のことだったが、私は三歳の子どもの婚約者でも大事にしてくださる、そんなヴォルト様が大好きになっていった。そうして、あっという間に二年が過ぎた。
「レティは頑張り屋だね、もう少し両親に甘えておくといいよ」
「はい、ヴォルト様。両親は私をもう十分に、甘やかしてくれていますわ」
「それじゃあ、レティに聞こう。もう二年が経つ、俺は辺境に行くけど君もくるかい?」
「もちろんです、ヴォルト様。足手まといにならないように、私も頑張ります」
そうして私はヴォルト様が十歳になったら、ヴォルト様の領地である辺境に一緒に行くことになった。私は荷物は最低限にして、厳しい辺境に耐えれるような服や靴それに本だけを持っていった。ヴォルト様はきちんと私の両親に挨拶をしてくれた、両親は私のことを涙を浮かべて見送ってくれた。
「俺が必ずレティを守り抜きます」
そうヴォルト様は私の両親に言って、辺境に行くまでの間も随分気を使ってくれた。私は心はもう大人だったが、体はまだ五歳だったからヴォルト様は休憩を多めにしてくれたり、私の為に信用ができる優しい侍女を用意してくれたりした。そうして私は無事に辺境への都市へと辿り着いた。
確かにまだ発展していない辺境の都市は小さく、まるで小さな街のように人々が少なかった。でもヴォルト様は辺境に着いてからすぐに色んな政策をはじめた。まるで先のことが分かるかのように、飢饉が起こりそうな時には穀物を貯めておいた。洪水が起こりそうな場所があったら、雨季になるその前に頑丈な堤防を作って皆を守ってみせた。
「レティがいると落ち着くよ、俺は君がいてくれて嬉しい」
「でも私はあんまりお役に立てません」
「いや、君が俺の隣にいてくれるだけで、俺はほわっとして心が安らぐんだ」
「それなら私はずっとヴォルト様と一緒にいます」
私はちょっとだけヴォルト様のお役に立てた、王太子妃として学んだ知識それにお父さまから教えられた知識で、ヴォルト様の政策で少し甘いところがあったら進言した。ヴォルト様はそんな五歳の私が言うことを真剣に考えてくれた、そうしてだんだんと辺境は発展していった。そしてヴォルト様は十七歳になった、私は十二歳になっていた。
「ヴォルト様、もし魔物からの攻撃にあったら、特に左からの攻撃に気をつけてください」
「レティからの忠告だ、しっかりと覚えておこう。レティ、君はいつものように屋敷にいておくれ」
「はい、ヴォルト様がいない間は執務を片付けておきます。どうか、ご無事にお戻りください」
「可愛いレティの頼み事だ、婚約者の俺としては守らないわけにはいかないな」
ヴォルト様が十七歳になった年も魔物が出るので、ヴォルト様たちは定期的に魔物を駆除していた。私もさすがにそんな戦場にはついていけなかった、私は剣も何も習っていなかったし、ついていっても足手まといになるだけだった。だから私はヴォルト様に忠告をして、そして執務を片付けたら彼の無事だけを一生懸命に祈っていた。
「レティ、君の忠告は役にたったぞ。少しだけ顔に傷ができたが、俺の目は潰されずにすんだ」
「ヴォルト様、ご無事で帰られて嬉しいです!! ああ、本当にご無事で良かった!!」
ヴォルト様は魔物退治で顔に斜めに走る傷を負った、でも私の忠告に従ってなかったら、きっと左目を潰されていたとヴォルト様は言った。私は少しでもヴォルト様のお役に立てて幸せだった、無事に帰ってきてくれたヴォルト様に抱き着いて、私は嬉しさのあまりに少し涙を零した。ヴォルト様も私を強く抱きしめてくださった、そうしてこの事件から三年が過ぎて私は十五歳の成人となった。
「レティも十五歳になったから首都の屋敷に行って、君の両親や親しい者を招いて俺と結婚しよう」
「はい、ヴォルト様。私はとっても嬉しいです、本当に凄く幸せなんです」
そうして私とヴォルト様は一旦首都に向かうことになった、辺境はヴォルト様が来て十年で首都にも負けないくらいに発展していた。ヴォルト様は私が恥ずかしくないようにと、沢山のドレスや靴それに宝石を私に贈ってくれた。私は王太子妃の時だってこんな贅沢はしたことが無かった、でも私への予算が余っていたから私は喜んでこの贈り物を受け取った。
「まぁ、レティったらこんなに綺麗になって!!」
「本当にあの小さかったレティかい? まるでお姫様のように綺麗だよ!!」
お父さまとお母さまは私の帰省を大歓迎してくれた、そしてお母さまは私が持ってきたドレスや靴それに宝石の見事さに驚いていた、お父さまは私が無事にそして綺麗に育ってくれたと言って喜んでくれた。そうして私とヴォルト様は結婚式をした、沢山の親しい人たちを招いて披露宴もした。
私はヴォルト様とファーストダンスが踊れて幸せだった、披露宴でもヴォルト様は優しくいろんな貴族に私を紹介してくれた。その中に私はシャルマン様がいたので驚いた、なんでもシャルマン様は碌に勉強をせず、王太子の座を弟王子に奪われていた。私はちょっとだけ昔の記憶を思い出して体が震えたが、ヴォルト様がそんな私をしっかりとエスコートしてくれていた。
「俺の大切なレティ、今は幸せかい?」
「はい、ヴォルト様。私はとても幸せです」
「そうか、それなら良かった」
「ヴォルト様も、今は幸せですか?」
「ああ、もちろん幸せだ。こんなに可愛い妻を手に入れた、だから俺は本当に幸せだ」
「そう聞いて安心しました、また辺境に戻って一緒にいつまでも暮らしましょう」
私はヴォルト様のおかげで幸せな初夜を迎えた、とても恥ずかしかったけれどヴォルト様はお優しくて、私は最初だけ痛みを感じたが後はとても気持ち良かった。そうして翌日になったらこんな質問をされたので、私は本当に心から幸せだとヴォルト様に答えた。
「…………あの時計を使って本当に良かった」
「ヴォルト様、何かおっしゃいました?」
「いいや、何でもない。何でもないよ、俺のレティ」
「はい、私はヴォルト様のレティです」
それから私が時が巻き戻った真相を知るのはもっと後のことだった、ヴォルト様は自分のお父さまから『運命の時計』という『魔法の道具』を受け継いでいた。そして前回の私はシャルマン様の側室にバルコニーから突き落とされて死んでいた、そんな私を哀れに思ってヴォルト様は、生涯一度しか使えない『運命の時計』を使って時を巻き戻したのだ。ヴォルト様の私を思う気持ちは強く、私は三歳まで時が巻き戻ったのだった。
私がそのことを聞くのはヴォルト様の息子を産んで、その息子に『運命の時計』を受け継がせることになった時だった。その時まで私は時が巻き戻ったことを不思議に思ったが、ヴォルト様から大切に愛されて幸せだった。そして真相を聞いてしまった後も、私は幸せに今度は最期まで生きることができた、それは私を愛してくれた優しい夫であるヴォルト様がいてくれたからだった。
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