Mad Tea Party

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「マスケットの音が聞こえた。うまくご招待できたみたいだ」  優雅にワインを飲みながらホール会場にたった二人きりで席に座っている。するとあっという間に窓からツイードが入ってきた。野良犬の始末が思いの外早く終わったので、海賊を呼びに出てくれたのだ。 「あの様子だと今回の茶番に彼らも気がついたようですね。船の守りも固そうでした。近づいた私に気づいて火炎瓶を投げつけてきましたよ。蹴り返しましたけど」 「大方副船長とかその辺の奴が残ってるんだろう。僕らは船や海の戦いには疎い、深追いはしなくていいさ。さて」  ツイードが戻ってきてからそれほど時間が経たずにバタバタと足音が聞こえてくる。そしてドガァン、と正面の玄関が吹っ飛んだ。 「凄いノックだね。そんなに激しくなくても聞こえるよ」 「そりゃ失礼。上流階級のマナーはよくわからないんでね。屋敷が馬鹿でかいから音もでかくしないと聞こえないのかと思った」  たどり着いた場所は大きな屋敷。入って目の前が広いエントランスとなっているが、あまり生活感がなかった。装飾品もほとんどない。普段使っていないようだ、ヴェンゾン家の持ち物ではあるものの生活しているのはここでは無いのだろう。  待っていたのはたったの三人。ニコニコと笑っている青年と、おそらく先ほどマスケットを撃ってきたであろう執事のような男。そして先日の少年。 「なんだ、招待してくれたからもっとオモチャの兵隊みたいな奴らが待ち構えてんのかと思ったぜ。人数足りるのか?」 「足りるよ」  その一言に海賊たちが殺気だった。お前らなんて三人で充分だと言われたのだから。 「さあてと。面倒くさいからこっちも出てきてもらおうか」  マルセルが手で合図をするとツイードが後ろにある扉に向けてマスケットを撃った。外からは悲鳴が聞こえ、撃たれたと思われる者の名前が叫ばれる。そして勢いよく扉を開けて大勢が入って来た。全員鎧を身にまとっている、先頭にいるのは怒りに顏を染めたモルドーだった。 「貴様ああああ!」 「人の家に勝手に忍び込んでおいて失礼だな」 「おい、テメエの方がノックでけえぞ」 「確かに」  ドラグの軽口にマルセルはあははと笑った。腹心を殺されたモルドーは剣を抜く。 「海賊討伐をしくじった件、審問会にかけようかと思ったがやめだ! 我が部下の命を一方的に奪った罪、貴様の命でもって償え!」
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