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「筋書きはこういうことかな。宝を持ち帰ったモルドーから宝をベタ褒めされて押し付けられたから買わざるを得ない。偽物だろうなんて言ったらその場で文字通り首が飛ぶわけだからね。そうして海賊を引き寄せて僕らに失敗を擦りつけ僕らは失脚。ついでに自分がその海賊を討伐すれば権力も得られる」
「宝を勧めた本人であれば、宝がどういう形なのかは知っているでしょうからね。最初からあの場にモルドーの息のかかった者がいたのでしょう。宝を買った男はマルセル様が殺さなくても始末されていたということですか」
「まるで子供が描いた絵本みたいな内容だ、頭の中が五歳位なんじゃないのか。俺だってそんな筋書きアホすぎてやらないぞ」
トドメと言わんばかりに実際の子供であるシャイルにそう言われて、マルセルは楽しそうだ。
この国と王家を裏で支えてきた三大貴族。全てが裏の仕事に関わっているのは、噂程度に貴族や有名な家柄の者たちは知っている。三大貴族の中でも頂点に君臨するのはヴェンゾン家だ。
「僕らが失脚すれば他の二つの家が勝手に争うに決まってるから、適当に罪をでっちあげてまとめて排除しようってところなのかもね。そう簡単にうまくいくかなぁ」
「その三大貴族の一つが私の実家なんですけどね。もう一つの家もマルセル様の母君のご実家ですし」
ツイードはやれやれといった様子だ。ツイードは三大貴族の一つであるエスネロイ家出身で、現当主の三男である。家は長男が継ぐし次男はその右腕。兄たちとは十歳以上年が離れている。家の事は兄たちで十分なので自分は何をしようかなと思っていた時、ヴェンゾン家で働いてみないかと誘われたのだ。三大貴族は仲良しこよしというわけではないが、協力体制はできている。
暗躍している一族同士なので、互いの足の引っ張り合いが激しいと勝手に誤解されているが。女王陛下に仕える者たちが足の引っ張り合いをして一体何になるというのか。
「僕らは役割を果たしているだけで権力なんて全く興味がない。権力に取り付かれた人間はそんな事は想像できないんだろうなぁ。とりあえず相手の台本に乗ってやろうじゃないか。どうせ海賊たちも何か舞台を用意しないと海に出られない。僕らが動く前に自分から仕掛けようと襲いかかってくるさ」
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