Mad Tea Party

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「よく言うよ。最初から生かしておくつもりなんてないくせに。それにしても」  ふ、っと。笑いながらも目を細める。その姿はまるで獣だ。モルドーはまったく気付いていないようだが。 「たかが人間一匹の命程度で、なんで償いが必要なのかなあ」  ぴくり、とハーヴェストがその言葉に反応する。生きることに強い執着を持っている彼にとっては納得できない考えなのだろう。無論、何も言わないが。  言わないというより言えないのだ。格が違う、と理解している。気が付いたらぎゅっと手を握り締めていて、汗をかいていた。 ――なんなんだ、あいつ。人間じゃないみたいだ。  まるで新月の夜に紛れる影。周囲の暗闇と溶け込んで、闇夜全てがあの男の支配下であるかのような。そんな不気味さと恐ろしさ。  ハーヴェストは満月の夜、煌々と明るい中ドラグたちと出会った。ドラグはギラギラした太陽のようで、時折穏やかな月のようで。いつも自分を照らしてくれる存在だ。その真逆の存在に全身の血が凍ってしまいそうだ。 「償いっていうのはそれ相応の価値に見合ったモノを返すことじゃないか。いらないでしょ、人の命だよ?」 「もういい、それ以上しゃべるな! 貴様は悪魔よりも外道であることは明白、害でしかない!」 「悪魔に会った事ないくせに。ま、いいや。これで役者が揃ったんだし。ねえ、女王陛下?」  笑いながら二階のほうに顔を向ける。ほぼ全員が驚いた様子でそちらを見た。シャイルは全く興味がないので見向きもしない。ドラグたちは驚いてはいないがチラリと目線だけ向けた。  そこには立派なドレスを身にまとった一人の老婦人らしき人がいた。豪華な扇で口元を隠しつつ、穏やかに笑っているものの目つきの鋭さがただ者でないとわかる。女王陛下、という言葉が真実ならこの国の頂点に君臨する者だ。 「早々にばらさないでちょうだい坊や」 「いらしてるだろうと思ってましたよ。こういう馬鹿騒ぎ貴女はお好きでしょうから」  何でもない会話をしているように見えるが、これが異様な光景だというのはその場にいる全員が理解した。特に戦士たちは全員目を見開いて慌てて跪く。 「ふふ。私を楽しませてちょうだい。誰がどう転んでも私は楽しいわ。海賊も一緒に踊ってちょうだい? 今ここに国のあり方が問われる天秤が用意されてるのよ。誰に傾くのかしらね」 「天秤って事は皿が二つだろうが。俺たちが入ってねえぞ婆さん」 「言葉を慎め下郎!」  ドラグの言葉にモルドーが勢いよく顔をあげて怒鳴る。 「うるさい」  シャイルと、ハーヴェストの声が重なった。二人はお互いを見て顔を顰めて小さく舌打ちをする。その様子にツイードはくくく、と笑っている。 「気が合いますね。お友達になれそうじゃないですか」 「アンタ冗談言えたんだな。全然面白くないから教師雇って勉強してくれ」
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