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シャイルvsハーヴェスト
ギイン、と剣が交わり弾かれる音が響く。お互い体力のなさは理解している。だからこそ、無駄のない動きで相手の力を利用する。てこの原理を使った戦いかたを得意とするのは、お互い様だと戦ってすぐにわかった。
「思い出した」
淡々と、何でもない事のようにシャイルは言う。ハーヴェストの三連撃をすべてかわしながら。
(連撃かわすのかよ、バケモンじゃん!)
(長剣で連撃すんなよ、バケモンかよ)
「なんだよ!」
吠えながら、ハーヴェストは蹴りを放とうとしたが。ふいに背筋がぞくりとして止めた。見ればいつの間にかシャイルは左手にもナイフを持っている。蹴っていたら、切り裂かれていた。
「初対面で気持ち悪いって言ってくれたよな。失礼な奴」
「だってそうだろ。生きてるくせに、死人みたいなツラして!」
ハーヴェストの一撃を体勢を低くしてかわすと、そのまま一気に距離を詰めた。間合いを詰められたら長剣は役に立たない。
膝にナイフを突き刺そうとしたが、目の端にきらりと光るものが見えた気がして横に飛んだ。見ればハーヴェストはすでに剣をふるっている。あの短時間で、あの大きさの剣を切り返すとは。
連撃が得意なだけではない、手首が柔らかいらしく長剣らしからぬ戦い方までできるようだ。手首の負担が大きくなるのであまりやらないだろうが。
(海賊の剣って絵本に出るような馬鹿みたいな反り方してるって思ってたがなるほど。切り返しがしやすい構造だったのか。そりゃそうか、大勢対大勢で戦うんだから)
生きる舞台が違えば戦い方が違う。だがそれは別の舞台に上がっても生かされる。否、生かさなければ生きていけないのだ。
海賊はいつ死んでもおかしくない危機と常に隣りあわせだ。嵐や遭難にあう危険、海賊同士の戦い、討伐される危機。だからこそ様々な場面で戦えるように、生きることに強く執着する。
大嫌いな部類だ。
「息してれば生きてるのに。自分から生きることに縋ってて楽しいか? くだらねえ」
「はあ!? お前……本ッ当に腹立つな!」
ハーヴェスト渾身の一撃が振り下ろされた。かわそうとしたが、体勢が悪い。今かわすとおそらく次の切り返しで左手のナイフか、腕そのものが吹き飛ばされる。咄嗟に、両腕を交差してナイフでバツをつくりそこで剣を受けた。
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