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受けた瞬間、思い切り挟んで横に凪ぐ。剣をからめとられた状態で横に飛ばされて、ハーヴェストの体勢も一瞬崩れた。追撃しようとしたが、ハーヴェストは削がれた勢いを逆に利用して横に一回転すると斬りつけてきた。それをかわす。
「あら、器用な事」
女王が面白そうに言った。
「あんな一撃をまともに受けたら真っ二つになりますからね。防御は剣でやって、受け止めず逸らせって教えました」
マルセルがなんでもないことのように言う。それがいかに常人離れしているか、モルドーにはわかる。それがあんな、声がわりもしていない少年ができてしまうなど。
「それができちゃうのねえ、あの子」
「かわいいでしょう、あげませんよ。せっかく見つけた猫ちゃんですから」
「……あら。まさかアレがチェシャなの?」
「馬鹿な!?」
声を上げたのはモルドーだ。まさか、あんな子供が? ファミリーの一員は誰であれ王家に直接仕える。裏の世界で殺しも情報操作も何もかも手掛ける重要な役割だというのに。
「貴様、大切な役割を一体なんだと思っている!? 子供に与えるなど!」
「人を見た目でしか判断できないの? あの子は優秀だよ、少なくとも君よりは」
はは、と笑われてモルドーの額に青筋が浮かぶ。
「おちびちゃんだから体力ありきの戦いは無理です。筋肉馬鹿ならあの場で剣を受けて力比べってところでしょうが。そんなの自分の体力削るだけで究極の無駄で無意味ですからね」
マルセルの言葉にモルドーはもちろん、その場にいた戦士全員が睨みつける。おそらく剣でせめぎあうのは戦士の戦い方なのだろう。それを侮辱されたのだ。
マルセルの解説に女王はふふふと少女のように笑う。どうやら退屈しのぎにはなっているらしい。女王の御前でなければ、今すぐこの男を殺しているのに! そう顔に書いてあるかのようだ。
「ツイード、どう見る?」
シャイルに体術や剣技を仕込んだのはツイードだ。そのためどう見ているのか気になりマルセルはそう声をかけた。
「一応互角ですね。剣技は相手の方が上ですが、相手の動きを予測して数歩先を見て戦うチェシャにも勝機はあります。しかし海賊だからでしょうかね、彼は咄嗟の判断がずいぶんと適格だ。正反対の戦い方だからこそ、どちらが有利というのはありません」
「一瞬の勝負になるってことか。いいなあ、あの子欲しいな」
「アホ」
最後の一言は離れたところにいるドラグだ。
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