女王の見据える先

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「んで? ごうつくばりの婆さんは何が欲しいんだ。今教えてくれれば船から取ってきてやるぞ」  笑みを消して訪ねてくるドラグに、女王は口元に笑みを浮かべる。 「その手には乗らないわよ。それを口にしたら、それを優先的に壊すつもりでしょう」 「俺も時間稼ぎには乗らないね。船の仲間を人質にでもするか? 俺たちが戻らなかったら船を完全に燃やしておけって仲間に伝えてある。海で生きるのをやめたら山賊になるから心配すんな」  その言葉に女王が笑みを消した。そして大きくため息をつく。 「海の上でも燃え続ける火薬、あなたたち持っているそうね。あなたたちに潰された海軍の生き残りが教えてくれたわ」  目を疑ったという話だった。海の上がまるで草原のように燃え続けているのだ。水をかけても海水をかけてもその火は消える事はなく海軍はなすすべなく壊滅した。海に逃げても焼け死ぬというあり得ない光景が広がっていたという。  海を漂い続け何とか漁船に拾い上げられた一人の兵が、女王に報告したその内容は信じられないものだったが。しかし屈強な戦力を誇った海軍の全滅は確かだった。大砲、乗っている人数の多さ、持っている武器。何もかも全て海賊の上を行くものだったというのに。  たった一晩で五倍以上の戦力だった海軍は全滅した。それを納得させるだけの理由だった。 「あー、あれね。紙面に残したら勝手に盗まれそうだから、俺を含めて一部の奴しか製法を知らないなあ」 「つまりお前一人いればこと足りるということね」  この場にいる全員を殺してしまってもかまわない、とマルセルに伝えているというのがわかる。しかしマルセルは動こうとしない。ちらりと見れば、子供のように不満そうに口をとがらせていた。 「そんなものが欲しいんですか? 火薬は一歩間違えば味方にも被害が大きい。良いじゃないですか、この先も戦は兵士に任せれば」 「お馬鹿さん。今や長距離は船で移動するのが当たり前。海を制した者が世界を制するのよ。海軍に力を入れなければこの国が輝き続ける事はありえないわ。国外の対策を優先的にしなければ意味がないでしょう」 「そうなると、船の戦いでは剣は使えませんよ。ますます銃が主流になる」 「当然でしょ。一体いつまで古臭い戦い方にとらわれているのかしら。剣で戦っていたら戦が長引いて決着がつかないわ。訓練しなければまともに戦える人間が育たない。でも銃は使い方を覚えれば子供だって人を殺せるの。この国が強くなるには海の武力向上と銃が絶対に必要なのよ」
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