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卒業と後輩(1)
2月下旬。
3年生の卒業が間近となった。
俺たち一年生は卒業式には参列しない。
だが、準備係として各クラス数名が駆り出されることとなり、見事にそのメンバーに選ばれてしまったのが俺――立花郁斗。
三年生とは関わりが少なかったものの、何人か……俺が入学したての頃に一目惚れして且つ蛙化現象を起こし振った先輩がいる。
まあ、三年生は年明けから自由登校でほとんどの生徒は来ていないし、顔を合わせることもないんだけど……
忘れていた。
あの、俺の苦手な、榊原先輩も三年生だということを……
「……卒業生代表、榊原翠」
しかも彼女は卒業生代表らしく、今まさに答辞の練習をしているのだ。
「はぁ…………」
「立花、手ぇ動かせ、手ぇ」
「分かってまーす……」
榊原先輩とは気まずいったらありゃしない。
先輩の顔を見る度に後夜祭のあの時見た光景がフラッシュバックする。
俺は先輩の連絡先も知らないから、校内で見かけない限り話すことはないんだけど、どうやら朔はたまに先輩と連絡を取っているみたいだし。
……多分、あの人のことだから俺と朔が付き合ったことも知っているだろう。
だから怖いんだ。
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