終わり

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終わり

さよならしようと思うの 千春は彼の腕の中でまだ火照った素肌を互いに密着させまんじりともせずひととき燃えつきた余韻に浸る様子もなく物憂げに黙りこんでいたのだがやがて千春は咽び泣く。それは次第に声をあげ泣きだし強く彼の胸に抱きついた。まるでダムが大雨に耐えに耐えた挙げ句に決壊したように。彼は何も言わずそっと千春の髪を撫でた。まるでこれまでの苦しみを吐き出すように嗚咽する千春。忍び耐え難い日々を過ごしてきたのだろうと彼は思った。初めて千春を見たときの印象は幸の薄そうな女という印象であったし実際に話してみれば何か陰鬱としたものが千春の心にあるようでそれが気になりやがて彼は千春に恋心を抱いたのだ。決して美人で派手でもなくどちらかと言えば地味のひと言で片付けられてしまうような女かもしれないが彼は何かそのままにしておくことができない気持ちになったのだ。やがてそれはとうとう身体の関係を結ぶことになったごく自然に。 生まれたままの姿でベッドに入り千春は彼に抱き寄せられ熱い口づけを交わす。舌と舌とが絡み合いもうそれだけで千春の興奮は高まっていた。考えてみれば夫とこのような口づけをしたことなどなかった。千春も夫とは特にしたいとは思わなかったが彼は違う。優しく髪を撫でながら舌を絡め彼の右手は千春のもはや丸みのないような乳房をそっと揉みしだくと千春は殊更に熱い吐息とまるで少女の泣き声のような喘ぎ声を響かせた。乳首をそっとつままれそれまで千春の舌と絡めていた彼の舌はいつしか千春の首筋を舐め上げ乳首をそっと吸い甘噛みをするその度に千春は身体をくねらせ女の悦びを知った。夫とのただの子作りの為の作業のようなセックスとはまるきり違う彼とのセックスはまだ愛撫されているだけで感じ千春は何度も気が遠くなるほどの快感を覚えた。そして彼は千春の手を自身の肉茎へと導きそれをシコシコと擦るよう促されたがやはりこういったことも夫とはなくそれまでも処女であったから生まれて初めて男性器を手で愛撫したのであった。千春がその肉茎を摩るたびにそれは硬さを増した。千春は今度は彼に促されることなくその熱く硬くなった肉茎を口に含んだ。それも夫にもしたことはなかったが雑誌などでまだ学生の頃からそういった愛撫があることは知っていた。しかし口に含んだあとはどうしたらよいのか千春にはそれが分からずただ一生懸命に彼の肉茎の裏筋を舌で舐め上げた。やがて彼はそれをいち度引き離しそっと口づけをし体の向きを変えると互いの性器を口で愛撫しあった。これまで誰にも舐められたことのない千春の秘部は夥しく濡れそぼり彼のすぼめた舌が出入りする度に早くこの千春の口にある肉茎で激しく犯されたいと願ったとき千春の口からか細い声がした 「お願いです早く犯してください」 彼はいち度千春から身体を離し千春の足指を一本ずつ丁寧に舌で愛撫しやがてそれは足裏から足首を通り白い太ももを這い上がり今度は貝ではなく菊門を舐め舌をねじ込んだ。 「ああそこはダメ汚いところ」 悶えながらようやく千春は言ったが全ての穴を犯される妄想で自慰に耽っていたが今それが叶おうとしているのだ。 「千春の体に汚いところなんかひとつもないよ」 千春の菊門に舌を出し入れした彼は言う。そして彼はまた千春を抱き寄せ舌を絡めあう口づけをしながらゆっくりと自身の肉茎を千春の秘貝へと押し込んだ。何十年ぶりに挿入されたそのモノは大きくまるで夫のそれとは違う大きさ太さ硬さに千春は何度も身震いをしまるで野生の生き物のように激しく喘いだ。彼の腰使いがどんどん激しくなり千春はすでに何度も絶頂を迎え彼も小さくうめき声のようなため息のような声とともに千春のその中で果てた。そのあともふたりは抱き合い舌を絡めあう口づけをしばらく交わしまだ荒い息遣いのまま千春は彼の胸に手を回し彼の腕の中で様々なことを思っていた。 「もっと好きになってもいい?」 彼の腕の中で千春は呟くと彼はそっと髪を撫できつく抱きしめるのであった。千春はその腕の中で様々なことを思った。どれも不幸なことばかりであった。こんなセックスも知らずに五十過ぎまで生きてきたこと。いえセックスだけではなくどれだけ夫は自分を家政婦か母親代わりにしてきたのだろうかという疑念やわだかまり。さらにたどればたいした友人もなく夫に頼るしか術がないと思っていたこれまでの日々。もう戻れない。もう戻ることなどごめんだ千春はそう思った。もしかしたらこれから彼と新しい人生を歩めるのではないか。これまでの辛い日々には別れを告げよう。そう千春は思う。昨日までの自分に別れを告げるその覚悟を決めたのだ。
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