七月二十一日

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七月二十一日

 その日はいつも通りの日常だった。朝起きて、朝食を食べ、家を出て、学校に着いたら授業を受け、友人と他愛ない話をしながら昼を食べた。授業が終わったら巫山戯ながらも掃除を済ませ、最後のホームルームも滞りなく終わった。変わったことが起こったのは、下駄箱で靴を履き替えようした時だった。俺の学校の下駄箱はロッカータイプで外開きで、そのドアを開けたところヒラヒラとなにかが落ちてきた。足元に落ちたなにかを拾い上げると、それは白い封筒だった。それに気づいた友人たちはすぐに興奮したようにわらわらと寄ってきた。ラブレターか?とはやし立てられ若干眉を顰めてしまう。告白される嬉しさよりも、友人にはやし立てられて照れる気持ちよりも、断ることへの煩わしさが勝ったからだ。いや、まだラブレターだと決まったわけじゃないしと友人を軽く払い退け封筒を眺めてみる。封筒の表側の真ん中に名前はきちんと俺の名前―朝比奈徹―と”様へ”が一緒に書かれている。自分宛の手紙だと理解したうえで裏返すと、右下には”目黒遥”と書かれていた。めぐろはるか、聞いたことのない名前だ。靴を履き替えながら封筒をくるくると回し見てみるがそれ以外に情報はなさそうだった。友人たちも靴を履き替えているが、俺が開けるのを今か今かと待ち望んでいるようだ。ため息をつきながら糊付けされた部分を剝がして開ける。内容を読んでいくうちにだんだんと血の気が引いていく感覚を覚えた。足元から崩れ落ちそうになっていく。周りの学生たちの声でどうにか正気を保ち、手紙をぐしゃぐしゃに丸めてカバンに突っ込んだ。 『朝比奈 徹 様。突然のお手紙失礼します。僕はあなたの秘密を知っています。この手紙を意味をあなたならわかることでしょう。バラされたくなければ七月二十一日の午後五時、✕✕公園へお越しください。もし来なければ、すべてをみんなにお話しします。目黒遥』  七月二十一日…夏休みまで、あと一週間の日のことだった。
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