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いてもたってもいられず、僕はもう一度部屋を飛び出した。
けれど、あてもなく探し回ったところで結果は同じだった。こうなったらと警察に助けを求めてみても、まったく取り合ってくれなかった。
パコが見つからないまま、数日が経った。
部屋の中でぼうっと過ごしていたそのとき、玄関のチャイムが鳴った。
出てみると、宅配便だった。パコかと期待したけれど、そんなはずはない。ダンボール箱の貼付票を見ると、どうやら送り主は実家のようだった。しかし、仕送りはこの前送られてきたばかりだ。
求められるままにサインをし、ダンボール箱を受け取る。
「あ、ありがとうございました……」
玄関のドアを閉めた、次の瞬間だった。
くぅんと鳴き声がした。と同時に、腕の中にある箱がもぞもぞと動いた。まさかと思って箱の側面を覗くと、そこには『拾ってください。』の文字がたしかに太いマジックで書かれていた。
しばらく経ってから、ようやく合点する。
パコは僕の元に帰ってくるために、この部屋でよく目にしていた実家からの仕送りのダンボール箱に化けたのだろう。住所の書かれた貼付票まで見事に再現して。
「みーっけ!」
僕は涙声でそう叫ぶと、パコの口を塞ぐガムテープを急いで剥がしてやった。
すぐさま、グローブの赤がこれまでにないほどの勢いで視界に飛び込んでくる。
「うわあ!」
分かっていても、またまた声を上げてしまう。
そのパンチは、パコが初めて「ただいま」と言っているように見えた。
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