カタズアホの書

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 ヴォルヴォアエは水中に舞う珠を見て満足し、世界の誕生を寿いだ。 「世界に秩序、命に平安を。世界に永久の安寧あることを祝う」  そして母なる創造神、エンバイネのもとを訪れた。 「今日は世界の完成を共に祝うため、原書をつくりし貴方にお礼を申すために参った。我が変えた世界は、お気に召しただろうか」  エンバイネは静かに言った。 「見よ。世界は明るく、整った。されどいささか、単調ではあるまいか。珠の形は、皆同じ。幾年たっても変わることがない。見ていて何のおもしろみがあろうか。私がひとつ、創造神として仕上げをしよう」  エンバイネがそう答えると、世界が震えた。何事かとあたりを見回す珠は、その姿を変える。完全と定められていた球から、複雑な形へ。色はすべてを含んでいた十二色から失われ、固有の色へと変わる。星々の色は多様に、地は数多の石に彩られ、その上を植物が覆った。それらはすべて完全な球ではなく、大神は異形と呼ばれる。しかし彼の言葉によって、それは混沌とはならずに独立した、美しさを残すものとなった。 「見よ、世界は花に満ち、物語があふれる園となった。美しきかな、新しき世界。永く、永く、いつか滅ぶまで共に見届けよう」
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