カタズアホの書

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 エンバイネに大神は怒りをあらわにした。「何と、何と、我が秩序を乱すとは。静かに美しく、不変なることこそ至高。完全、永遠に勝るものなし。ここに我は誓う。この世界に言の葉なる法をもたらし、万物を裁かん。我が代理として十二の珠に世界を委ねよ」  神は怒り、世界は乱れた。地から炎が湧き、天の星は燃え落ちた。あるはずのない幻が徘徊し、嵐が世界を破壊する。世界に「死」が生まれ、すべて物に滅びが訪れることとなった。  八年間続いた戦いに、ついに決着のときは訪れなかった。ヴォルヴォアエは強大、しかしエンバイネもまた原初の力を持つ。ヴォルヴォアエに、世にはびこる不完全を消すことは叶わず。大神は異形のものを認め、世に栄えることを許した。 「醜く、いびつなるものは、死に絶え、美しく生まれ変わらん。ものに序列を、命に栄光を。我が珠に、さらなる知力を与えん。これを人と名付ける。すべてに意匠、暮らしに華を持たせよ。世を記し、幸を、そして変化を追え。世界を元に戻さんがため、神に代わって地を護れ」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加