ラブレター

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三年B組。 なんとか、道司と教室まで辿り着いた。 道中、道司は両手でラブレターを胸の前に置き、心底幸せそうな表情をしていた。 ラブレターなんてもらった事無い僕は、それが正解のリアクションなのか分からないでいた。 とりあえず、落ち着いているので良しとするか。 その後、僕たちが到着したタイミングで担任の吉澤が入ってきたので、すぐに朝のホームルームが始まった。 道司の席は、僕から離れた窓際の席だったが明らかにここ数週間の落ち込みを忘れてしまうくらいに表情は、活き活きとしている。 昼休み。 いつもの様に、僕と道司は美香の席まで行き弁当を広げる。 「なんで、アンタら毎回私の席まで来んのよ。」 美香は、朝同様に若干の毒舌で昼の挨拶を済ませる。 「なんだ美香ー。俺たち寝食を共にする仲間だろぉ〜。」道司がふざける。 「(しん)は共にしてねぇーわっ。」 鋭いツッコミが入る。 「ハハハハ。」 完全に、道司がいつもの調子に戻っていた。 良かった。ホッとし自然と笑みが溢れてくる。 「おっ、美香。玉子焼きいただきっ」 「あっ!」 「次は、準の玉子焼きっと。」 「おいっ!」 いつもの調子どころか、調子にすら乗っているんだが・・。 ※※※※※※※ 「いやーー。何回読んでもグッとくるなぁ〜。   いやーー、ラブレターとか初めてもらったぜ〜。                いやーー、、。」 うざい。若干うざい。 なんて書いてあったのか、聞いて欲しそうにラブレターをヒラヒラ、うちわ代わりにハジャイでいる。 俺も美香も黙って弁当を黙々と食べ進めていき、なんだか味わう間もなく食べ終えてしまった。 「しょうがねぇから。お前たちに幸せのおすそ分けでもしてやるよー♪」道司は、我慢出来なくなった 様で自らラブレターを三人の中心にビシッと広げて見せた。 「ちょっ。アンタそういうは他人に見せちゃダメでしょっ!」と美香が。 「そ、そうだよ。道司、あんまり見せびらかすもんじゃないって。そういうの。」 止めよう思い中腰になるが、道司に「まぁまぁ、俺もお前たちだから見せるんだよ。他に見せる気なんてねぇよ。」と諭されてしまった。今の道司には何を言ってもきっとノーダメージなんだろうな。 ラブレターは三人の中心に広げられ、思いを綴った文面が露わになる。 一瞬、美香のこめかみがピクッと跳ねた様に見えた。 【斎藤 道司さま】 『とつぜん、お手紙を出してしまいごめんなさい。 どうしても、この気持ちを伝えたくて、、我慢出来なくて。 私は、アナタの事をずっと見てきました。 何にでも前向きなアナタはいつも眩しくて、私にとっての太陽みたいな特別な存在です。 部活に打ち込む姿もとても素敵で、陰ながらいつも応援しています。 私はアナタが好きです。』 そこには、若干のぎこちなさを感じるが道司に対する思いが一枚の紙に記されており、最後に『アナタが好きです。』とハッキリとした好意が感じられるモノだった。 「なんで、準が紅くなってんだよ。」道司が僕を覗き込んで言った。 「えっ、いや。なんとなく。ラブレターなんて初めて見たからさぁ。」どうやら、顔が紅くなっていたらしい。 「なぁ、美香はどう思う?」 「別に。」 美香はいつも通りの冷たい反応だった。 「別にって、そんなつれないこと言うなよぉ〜。」 「やっぱり。こういう手紙は、見せびらかすもんじゃないわよ。道司。」と冷たい反応。 「なんで、美香が怒ってんだよぉ〜。」変わらずあっけらかんと道司が美香の肩を叩く。 「そういうのいいから。私、先生に呼ばれてたんだったわ。それじゃ。」 そう言うと美香は、道司の手をはらうとそそくさと教室を後にしてしまった。
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