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美香
放課後。
誰も居なくなった教室、スマホで小説を読んでいた。最終単元の前に、美香から「準、放課後話があるから、ちょっと残れ。」と、いつも通りの不機嫌な感じで言われていたのだ。こちらの都合などお構い無しなところが、とても美香らしい。
しかし自分から残ってろ言ったのに、美香の姿はまだ無い。というか、ずいぶんの間誰も居ない。
ガラガラガラ。教室の引き戸が開けられると、「わりぃ。ちょっと遅れたわ。」と雑な謝罪をしながら美香が入ってきた。
「いや、俺も今来たところだよ。」おきまりの返事で返す。
「だったら準、遅刻よ。残ってって言ったでしょ。」
「ウソウソ。ずっと残ってたって。」
まさか、遅れて来た美香に遅刻と怒られるとは思わなかったのですぐに訂正する。
「なら、良し。まぁ準、座って話そうよ」
きょとんした顔になる僕に、美香は教室の窓際を指差す。「窓側の地べたに座ろう。」という意味だったらしい。美香はいつも言葉が足らないと思う。がそれもまた美香らしいとすら思うと悪い気はしない。
僕と美香、二人で机と窓のちょっとした隙間に腰を着く。
首を上げ、窓を下から覗くと橙色の空が日が伸びてきた事を教えてくれる。
なんだか凄く心地良い感覚だった。
なかなか口を開かい美香。
「きっと、廊下からは教室に誰も居ないように見えてるよな。」別に沈黙が嫌な訳では無かったが、ふと思った事が口に出た。
「ねぇ、準。」
「ん?」
「道司のラブレター。」
「うん。」
「あれ、出したの準でしょ。」
「・・・・・」
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