63人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
彼の声がしてわたしは起きあがった。まだ裸のままなことをすっかり忘れていたわたしは、慌てて上掛を引き上げた。
「なに?もう俺誘ってる?」
わたしはぶんぶん首を振る。
決してそんなつもりでは…
彼はキッチンでコーヒーを入れていて…
何しろ狭いのでキッチンからベッドまで丸見えなのだ。
わたしは急いで洗面所に駆け込む。新しい下着や服を身に着けるとキッチンに行った。
わたしは小さなコンパクトキッチンで尊さんが入れてくれたコーヒーを一緒に飲んだ。
尊さんはぼんやりとわたしを眺めている。顔はにやけていつものシャープな目はとても見られたものではない。
でもそんな彼もまた良かった。
「ほら、あの…尊さんもう帰らなきゃいけないんでしょう?」
「ああ、そうだな。でも陽奈子といたい」
「仕事は大丈夫なの?」
「ああ、何とか。大口の仕事も決まったし、それにもうすぐ手伝いが必要になると思う」
「それって、わたしじゃだめ?」
突然そんなことを言ったわたし…
最初のコメントを投稿しよう!