1

3/15

63人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
 そうだった。今日は望んでもいなかったわたしの結婚式。  熊谷の父のため、会社の為にといわれて、断る暇もなく準備はあっという間に進んで…  確か…もうやけくそのように気分で、結婚式が行われる会場に向かっていて、ホテルはもう目の前で、わたしは石畳の道路を歩いていた。  その時、思いっきり脚を蹴り上げた拍子に、履いていた靴のヒールが石畳の隙間に引っかかって、わたしはひどい転び方をした。  馬鹿なことをした。  その時の事がスローモーションのように蘇る。  バタッーン!わたしは見事に転んで確か頭をひどく打って…  そこにドアをノックする音がした。  「はいっ!」びくっとして思わず声が上ずった。  ゆっくり一人の男性が入って来た。  「あっ、目が覚めたんだ。良かった。丸一日意識がなかったから心配してた。そうだ、すぐ看護師を呼ぶから」  男性がわたしに近づいてきて、微笑んだ。  わたしはその人の顔を見つめた。  この人は誰なんだろう?
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加