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そうだった。今日は望んでもいなかったわたしの結婚式。
熊谷の父のため、会社の為にといわれて、断る暇もなく準備はあっという間に進んで…
確か…もうやけくそのように気分で、結婚式が行われる会場に向かっていて、ホテルはもう目の前で、わたしは石畳の道路を歩いていた。
その時、思いっきり脚を蹴り上げた拍子に、履いていた靴のヒールが石畳の隙間に引っかかって、わたしはひどい転び方をした。
馬鹿なことをした。
その時の事がスローモーションのように蘇る。
バタッーン!わたしは見事に転んで確か頭をひどく打って…
そこにドアをノックする音がした。
「はいっ!」びくっとして思わず声が上ずった。
ゆっくり一人の男性が入って来た。
「あっ、目が覚めたんだ。良かった。丸一日意識がなかったから心配してた。そうだ、すぐ看護師を呼ぶから」
男性がわたしに近づいてきて、微笑んだ。
わたしはその人の顔を見つめた。
この人は誰なんだろう?
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