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「どっちが早く退院できるか競争しよう」
そんな風にして、無邪気に戯れ合っていたはずのわたしが、退院の目処が立たぬほど深刻な病気を抱えていたことを、あとになってあなたは知った。
以来あなたは、人より抜きん出ることを恐れるようになった。優しすぎるあなたになった。
あなたと同じように、あの時のことを、わたしはずっと悔いている。
目を合わそうとしなかったのは、ただたまらなく寂しくて、泣いてしまいそうだったから。泣き顔を、見せたくなかった。
イルカのぬいぐるみを盗ったのは、それさえあればまた、あなたに会える気がしたから。幼くて、不器用過ぎるわたしだった。
どちらにしても、あなたに会いたい、というわたしの願いは、叶えられることはなかった。あなたはわたしの、最後の友だちだった。
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