優しいあなた

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 コンビニの前で立ち尽くすあなたの視界に、先ほど電車に残してきたはずの原口さんが現れた時、あなたは驚きのあまり言葉を失い、自分の目を疑った。 「なんだか心配で、追いかけてきちゃった」  照れたように微笑む彼の言葉に、夜気に冷やされたあなたの頬は一瞬で熱を帯び、抑えきれず心はどこまでも、どこまでも高く舞い上がる。  脳裏では、ウミちゃんの言葉が鳴っていた。 『傷つかない方法じゃなくて、幸せになる方法を考えなよ』  それはわたしの願いとぴたり重なる。誰よりも優しいあなたは、あなた自身にも、どうか優しくあってほしい。  何かに導かれるようにして、あなたは一歩を踏み出した。その白い爪先に今、あなたは触れる。
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