優しいあなた

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 優しいあなたは、優しいままで大人になった。社会人になって2年目の夏、あなたはウミちゃんに誘われて飲み会に参加した。それは男女の頭数を合わせ、それぞれの自己紹介から始まる、あなたが苦手とする類の飲み会だった。 「友達が急に来れなくなったの。今日だけ、お願い」  ウミちゃんに懇願されて、あなたは渋々女性側の頭数に加わった。  ボックス席を個室風に仕切っている薄い扉を開いた瞬間から、すでにそれは始まっていた。向かい合った男女は器用に視線と言葉を交わし合う。 「ウミちゃんってさ、あの子に似てない? ほら、昔流行ったアイドルグループの」    一人の男が言いながら、果物の鮮度でも確かめるようにして、上下左右からウミちゃんの容姿を無遠慮に眺めた。   「わかった! KEIちゃん!」 「俺、超タイプなんですけど」  男たちは口々に叫んで、可能性を探るようにウミちゃんへ、更にはその隣、そのまた隣へと視線を這わせた。  場が盛り上がれば上がるほど、あなたの中で、この会に参加したことへの後悔が膨らんだ。あなたは、誰のこともジャッジしたくなかった。誰にジャッジされたくもなかった。
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