第2話

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「……テレジア嬢?」  いきなり表情を暗くした私を見てか、ラインヴァルト殿下が声をかけてくださる。  なので、私はゆるゆると首を横に振った。なんでもない。そうだ。なんでもない。 (これは、私の問題なんだ……)  ラインヴァルト殿下には、関係のないことだ。  そう言おうとして、顔を上げて驚く。……先ほどまで対面にいたラインヴァルト殿下が、いない。  しかも、すぐ隣から「テレジア嬢」と囁かれる。飛び上がりそうなほどに驚いた私は、多分目を真ん丸にしている。 「なんでもないわけがないだろ。……なんていうか、辛そうな顔、してる」 「そ、そんなの……」  多分、彼の指摘は正しい。私は今、見るに堪えないほど辛そうな顔をしている。  それがわかるからこそ、目をこすろうとした。けど、すぐに手を掴まれる。 「目をこするな。……傷つくぞ」  まるで幼子に言い聞かせるかのような、優しい声だった。  そんな風に声をかけられたことのない私は、ただ戸惑う。 「なにか、思うことがあるんだろ?」  彼が私の顔を覗き込んで、そう問いかけてこられる。  言えない。言えるわけがない。だって、私の考えは……ラインヴァルト殿下を、傷つけてしまう可能性がある。 (勘違いしたくない。けど、このお方を傷つけるのも嫌だ……)  私は、なんて傲慢なんだろうか。
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