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「騒ぎは起こしたくない。でも、あんたをこのまま放っておくことも出来そうにない」
「え……」
「だから、ちょっと付き合ってくれ」
彼が私の耳元に唇を寄せて、そう囁いてくる。その言葉にドキッとする間もなく、彼は私の手を引いて場を立ち去ろうとされる。
……私は、慌ててついていくことしか出来なかった。
そのまま彼に連れて行かれるがままに移動する。そして、パーティーホールを出て、お屋敷にある中庭にやってきた。
……彼は、「ふぅ」と息を吐いて肩を回される。
「全く、疲れたな。……帰ってきて早々、父上にここに放り込まれたに近いんだから」
「……そう、なのですか」
星空の下に行くと、彼の顔が余計に美しく見えた。……きらきらとした銀色の髪も、その金色の目も。
すべてが、宝石のようで美しい。……地味な風貌の私とは、大違い。
「さて、ここでだったら少しゆっくりと話が出来そうだな」
彼がベンチに腰を下ろして、私を手招く。遠慮がちに彼から少し離れて腰を下ろせば、彼が笑ったのがわかった。
「どうしてそんなに距離を取る。……なにも、取って食おうっていうつもりじゃないぞ」
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