第3話

4/25
1011人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
 だって、普段の彼女は。感情的になることはあれど、ここまで悪意をぶつけてくることはなかった。  ……今まで幾度となく喧嘩を売られたけれど、ここまで露骨な言葉は初めてだった。 「本当に嫌だわ。……私は周囲から笑い者にされているのよ?」 「そ、そんなことは」  コルネリアさまは周囲から認められている。……笑い者は、私のほうだ。 「長年側にいながら、殿下に愛を与えられない、惨めな女。……それが、私よ」  彼女が私のことを強く睨みつける。その目に宿った憎悪に、背筋がぶるりと震えた。  自然と足を後ろに引いて、彼女から逃れようとする。……でも、それより早く。彼女が、私の身体を突き飛ばした。 「ひゃっ――!」  不幸なことに、後ろは階段だった。  宙を舞う身体。どんどん遠のいていく、コルネリアさまのお姿。  彼女の目が、驚いたように揺れているのは、どうして? (――コルネリアさま、本当はこんなこと、したくなかったのでは?)  頭の中に宿ったその感情を、確かめるすべはない。  私は、床に強く身体を背中を打ち付けた。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!