第3話

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「その、コルネリアさまを不快にしてしまったのは、間違いなく私なのです……」  消え入りそうなほど小さな声で、必死にそう訴える。ラインヴァルトさまは、眉間にしわを寄せられる。  でも、すぐに「どういうことだ?」とおっしゃる。どうやら、私の言葉を聞いてくださるらしい。……よかった。 「その、私が、突然現れたから……です」  コルネリアさまのお気持ちは、私にも少しわかった。  長年ずっと一緒にいた異性が、自分じゃない人に愛を囁いている。しかも、自分が妻になるはずだったのに……と思うと、苦しいに決まっている。  彼女はきっと、ずっとラインヴァルトさまに気持ちを捧げていたのだろうから。 「……そうか」  私のいろいろと端折った説明を聞いたラインヴァルトさまは、頷かれた。  かと思えば、コルネリアさまのほうに向かい、彼女と見つめ合う。 「俺は、なにがあってもお前の気持ちは受け入れない。……そう、伝えていたな」 「……はい」  俯いたコルネリアさまの表情は、私には見えない。ただ、身体が微かに震えているのだけは、わかった。 「そんな冷たい男よりも、他にいいやつを探そうという気は、なかったのか?」
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