第3話

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「ほら、首に腕を回して」 「え、あ、はい……」  彼のほうはずっと平常だから、私が間違えているのではないかと思ってしまう。  その所為で、私は考えることを放棄して彼の首に腕を回す。……ほんの少し、身体が熱い。 「お前らは、さっさと持ち場に戻れ。あと、誰かコルネリア嬢を邸宅まで送ってやれ」 「はい!」  ラインヴァルトさまの指示を聞いて、使用人たちがてきぱきと動き始める。  一人の従者がコルネリアさまに声をかける。彼女は、ちらりと私に視線を向けた。 「……偽善者」  ぽつりと呟かれた言葉。……が、その言葉に覇気はない。 「……ごめんなさい」  それから、少し間をおいて零された謝罪の言葉。私は、頷く。  彼女が私とラインヴァルトさまの側を通り抜けるとき。不意に、彼女が私になにかを呟いた。 「――王妃殿下には、気を付けて」  まるで、忠告のようだった。いや、間違いなく忠告だったのだろう。  ただ、このときの私はそれを深くは考えなかった。胸の奥底では、モヤモヤが募っていたのに。  でも、私は――信じたかった、のだと思う。王妃殿下のことを。
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