第1話

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 けど、なんだろうか。 (お世辞だとしても、褒められるのは悪くない、かも……)  お父さまもお母さまも、家庭教師でさえも。私のことを褒めてくださらなかった。ゲオルグさまなんて論外だし。  だから、ラインヴァルト殿下のお言葉がたとえお世辞だったとしても、嬉しくてたまらない。舞い上がってしまいそうだった。 「なに、言ってんだ」  そんな私を見てか、ラインヴァルト殿下が眉を顰められた。  ……思いあがってしまったのが、バレてしまったのか。  一瞬そう思ってヒヤッとする私に、ラインヴァルト殿下は笑いかけてくださる。 「俺は本気だよ。……テレジア嬢の笑った顔は、とても可愛い」 「っ!」  ラインヴァルト殿下のそのお言葉が、胸に突き刺さる。でも、それよりも。 (ふんわりと笑われたラインヴァルト殿下、すごく、すごくかっこいい……!)  この世のものとは思えないほどに、美しいお人だった。  笑み一つで、この世界をキラキラとさせることが出来るんじゃないか。そう思ってしまうほどに、ラインヴァルト殿下を見ていると、全てがどうでもよくなってくる。  ……全然、どうでもよくないけど。私が置かれた状況が崖っぷちであることに、変わりはないけれど。
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