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「いえ、少し……その、今後のことを……」
まぁ、それは完全な嘘じゃない。今後、どうやって暮らしていこうかということではあるのだけれど……。
「……まぁ、そうだよな。婚約破棄されたら、家に居づらくなるだろうし」
実際は、居づらいどころの問題じゃないんだけど。追い出されそうなんだけど。
心の中だけでそう付け足しても、口には出さない。ぎこちない笑みを浮かべていれば、ラインヴァルト殿下がお一人でぶつぶつと呟かれていた。……その目が、真剣な色を宿している。
……私が口を出せることじゃ、なさそうだ。
「で、では、私はこれで。……お気遣いくださって、とても嬉しかったです」
立ち上がって、深々と頭を下げる。ラインヴァルト殿下が、私をじっと見つめていらっしゃる。
……その目があまりにも美しすぎて、なんだか変な気持ちになってしまいそうで。
それを誤魔化すという意味も込めて、私は踵を返そうとした。……けど、その手首を誰かに掴まれる。
「……テレジア嬢」
驚いてそちらに視線を向ける。そこには、当然といえば当然だけれど、私の手首を掴むラインヴァルト殿下がいらっしゃった。
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