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「い、いません! その、お恥ずかしいことに、先ほどのが全てなので……」
私はゲオルグさまの妻になるものだと思っていた。彼がいくら私のことを見下し、蔑ろにしてきても。私にはそれ以外の未来なんて用意されていないと、思っていたから。
ぶんぶんと首を横に振ってそう言葉を返すと、ラインヴァルト殿下の口元が歪む。
まるで、楽しそうなおもちゃを見つけた子供のような表情。でも、ちょっと違うかもしれない。
……これは多分、狙った獲物を逃がさないとしている肉食獣のような表情なのだ。
「じゃあ、俺が求婚しても問題ないな?」
「……は?」
自然と間抜けな声が零れた。
(い、今、おかしなお言葉が聞こえたような……?)
聞き間違いじゃなかったら、求婚と聞こえた。その求婚は求婚であって、球根とかではないと思う。
むしろ、球根の話だったら怖い。なんの脈絡もなく、変なほうに話が移ったことになるから。
「え、えぇっと、求婚とは、求めるに結婚の婚で、間違いないです……か?」
きょとんとしつつ、そう問いかける。ラインヴァルト殿下は、頷いてくださった。
「むしろ、ほかになんの求婚がある」
「しょ、植物の、球根とか……」
自分で言っておいて、なんとも意味の分からない会話である。
その所為で私が頬を引きつらせていれば、ラインヴァルト殿下の手がこちらに伸びてくる。
「いつも思っていたが、テレジア嬢は面白いな」
「お、面白いって……」
それは、女性に対する褒め言葉じゃない。
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