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……そう思うのに、なんだか悪くないなって。ずっと、面白みのない女だと言われ続けてきたから……かな。
「まぁ、そういう意味だ。……テレジア嬢、俺と結婚してほしい」
ラインヴァルト殿下の金色の目が醸し出す視線が、私に絡みつくような感覚だった。
……胸がむずむずとするのは、どうしてなんだろうか。
「む、む、無理です! 絶対に無理です!」
でも、そう易々と受け入れられるようなお話じゃない。
(だって、ラインヴァルト殿下は王太子さまなのよ? 私とじゃあつり合いが取れないわ……!)
婚約破棄された娘が、王太子殿下に嫁ぐなんてありえない。それこそ、物語の世界の中だけの出来事だ。
(もしかして、ラインヴァルト殿下はからかわれている……?)
そういった考えが思い浮かんで、彼の目を見つめる。……疑うことさえ申し訳なくなるほどに、まっすぐに私を見つめられる殿下。
……違う。からかっているわけじゃない。
(じゃあ、同情……とか)
そうだ。多分、これはラインヴァルト殿下なりの同情なのだ。
婚約破棄された私を放っておけなくて――。
「言っておくが、同情とかじゃない。俺は本気でテレジア嬢が好きなんだ」
……違った。
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