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けど、不可解すぎる。
だって、そうじゃない。……どうして彼は、私なんかを「好き」とおっしゃるのだろうか。
「……あり得ない」
小さな声でそう呟いた。
その声はラインヴァルト殿下に聞こえていたのか、いなかったのか。それはわからないものの、彼がピクリと眉間を動かしたのが見えた。……聞こえていたんだ。
「だって、おかしいです。……私とラインヴァルト殿下、真正面からお話したの、今日が初めてじゃないですか」
それに、私の容姿は地味なものだ。一目惚れという可能性だってゼロ。
「だから、そんなことおっしゃらないで――!」
嘘なんて、つかないで。期待なんてさせないで。
そういう意味を込めてぎゅっと唇を引き結ぶ。すると、ラインヴァルト殿下の顔からほんのりとしていた笑みが消えた。
「……初めてだったとしても、だ」
彼が真剣な面持ちで、はっきりとそうおっしゃった。
「たとえそうだったとしても、俺はあんたが好きだ。……あんたのことを、放っておけない」
……真摯な眼差しに、真剣な声音。心臓が、どくどくと音を立てる。
期待しちゃダメなのに。期待してしまいそうで、視線を下げる。
「このままあんたを放ったら、俺は一生後悔する」
「ど、うして……」
どうして。それ以上の言葉は、口から出なかった。
ラインヴァルト殿下が、私の身体を引き寄せてこられたから。
密着しそうなほどに、近い距離。ラインヴァルト殿下が、私の手首を掴んで自身の首筋に押し当てた。
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