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「なんだったら、あんたにだったら殺されてもいい」
「……そ、んなの」
王太子殿下ともあろうお方が、そんなことを口にしていいはずがない。冗談だとしても、不謹慎すぎる。
「それくらい、本気だっていうことだ。……わかるな?」
……命を投げ出してもいい。
つまりラインヴァルト殿下は、そうおっしゃっているのだ。
(殿下が、私に対して本気なのは、わかったわ……)
嫌というほどに思い知らされて、ごくんと息を呑む。ラインヴァルト殿下を見つめる。きらきらとした金色の目に映るのは困惑した私自身の顔。
「……で、すが、わた、しは……」
たとえ本気だとわかったところで、どうすることもできない。
私はこのお方の手を取ることが出来ない。そんなこと、許されない。
(私は、ラインヴァルト殿下に相応しくない……)
我ながらネガティブな考えだと思う。けど、長年ずたずたに傷つけられてきた自尊心は、そう簡単には修復できない。
気まずくて、彼から視線を逸らす。
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