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目を覚ます。
ふかふかの寝台から起き上がって、大きく伸びをする。
「よく、眠れたけれど……」
小さくそう呟いて、私は室内を見渡した。
室内には豪華絢爛な家具が配置されている。私の実家じゃ、足元にも及ばないほどに煌びやかな空間。
それに若干引いてしまって、頬が引きつるのがわかった。
(結局、ラインヴァルト殿下に押されてしまったし……)
あの後、いつまで経っても躊躇い続ける私を、ラインヴァルト殿下はご自身の乗ってこられた馬車に押し込んだ。
そのまま馬車を走らせて、王城に連れてこられた。いわば、拉致みたいなものだと思ってしまう。
……でも、本気で抵抗しなかった私も私。ラインヴァルト殿下だけを責めるわけには、いかない。
そして、今、私がいるのは王城の客間。他国の来賓の方々が使われるお部屋を、一日だけ貸していただくことになった。
これも、ラインヴァルト殿下の差し金。彼は、遠慮する私に「部屋の準備が整うまで、一日かかる」とおっしゃったのだ。
もちろん、そのときにやっぱり帰るという選択肢はあった。けど、臆病な私はその選択を取ることが出来なかった。
両親が怖い。……その気持ちは、いとも簡単にラインヴァルト殿下に見透かされていた……と、思う。
というわけで、私はすっかりラインヴァルト殿下に絆され、ここにいる……のだ。
「それにしても、本当……これから、どうしよう」
いつまでもラインヴァルト殿下に甘えるわけにはいかない。そもそも、ラインヴァルト殿下と私が結婚できるわけがない。
……いつか、追い出されることを覚悟しなくちゃ。
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