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半ば無理矢理連れてこられたというのに、爆睡していた私はちょっと情けない。だけど、私が悪いわけじゃないと思う。
……寝台がふかふかなのが、一番の原因なの。えぇ、そう。
「さようでございますか。でしたら、よろしゅうございました」
侍女は私の葛藤にも気が付かずに、笑ってくれる。
「申し遅れましたが、私はミーナと申します。今後、テレジアさまのお世話をさせていただきます」
「……え」
「……聞いておりませんか?」
彼女――ミーナがきょとんとして、そう問いかけてくる。……少し困ってしまって、目を伏せる。
「まぁ、ラインヴァルト殿下のことですから、素で忘れていらっしゃったのでしょう」
「……そ、そう、ですか」
「はい。それに、私になると決まったのは日付が変わる前でしたので」
ミーナはなんてことない風にそう言うが、ラインヴァルト殿下は忘れていたわけではないと思う。
単に、疲れている私を気遣って、夜に訪れなかっただけだと思う。
「まぁ、そこら辺はお気になさらず」
「……はい」
正直気になってしまうが、これ以上深入りすることは出来そうにない。
その一心で、私は静かに頷いた。ミーナは、相変わらずニコニコと笑っている。その笑みは無邪気にも見えるものであり、押されてしまいそうだった。
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