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「そんなことございません! テレジアさまに、とてもお似合いだと思いますわ」
私の言葉を聞いたミーナは、力強くそう言ってくる。……謙遜だと思われているのかもしれない。そんなわけ、ないのに。
「あ、あのね、謙遜とかじゃなくて……」
「さぁ、お時間がございませんので! さっさとお着替えに移りますよ!」
今度は、私の言葉なんて聞いてくれない。ミーナはまたてきぱきと動き出して、私のナイトドレスを脱がせる。あまりにも鮮やかな動きに、私はされるがままだ。
「正直なところ、私はこういう風にしたかったのでございます」
ミーナが私のドレスの着付けをしつつ、そう呟く。……こういう風って、どういう風なのか。
「こういう風って……?」
「女性の専属侍女になりたかったのでございます。元々ドレスの着付けとか、お化粧とかのほうが得意で」
確かに、ミーナの腕は確かなものだ。……もったいないとも、言える。
「ですから、今、とても楽しいです」
にっこりと笑って、ミーナが私に顔を向けてくれる。その笑みが、なんだか眩しい。
……私が、最後に無邪気な笑みを浮かべたのは一体いつだったか。もう、思い出せない。
「……そ、っか」
自然とそう返事をすると、ミーナが「出来ました」と声をかけてくれた。
「では、次に髪の毛のほうをセットさせていただきますね」
「……うん、お願い」
正直、まだ遠慮する気持ちもある。でも、ミーナが楽しそうにしているから。……断ろうなんて気持ちが、消えていた。
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