1145人が本棚に入れています
本棚に追加
「……だから、私は自分に自信が持てないの」
ちょっと、愚痴っぽい言葉だった。
「ラインヴァルト殿下が私のことを好きとおっしゃっても、信じられない。どうして、こんな私がって……」
ぼうっとする頭。口が勝手に動いて、自分の気持ちを言葉にしていく。頭はちっとも理解していない。
そんな私を見たからなのか。ミーナが息を呑んだのがわかった。……少し、困らせてしまったのだろうな。
「ごめんなさい。こんなことを突然言われても、困るわよね……」
苦笑を浮かべてミーナにそう声をかければ、彼女はゆるゆると首を横に振った。
「いえ、別にそういうわけではないのです」
ミーナが肩をすくめて、口をもごもごと動かす。多分、なんらかの言葉を探しているのだ。
それを理解して、私はなんだかおかしくなった。
「私はそう簡単には傷つかないから。……だから、直球に言って」
そう言うと、ミーナが一瞬だけ目を見開く。……が、すぐに「では」と前置きをして口を開いた。
「こんなことを言うのは、失礼だと承知しておりますが」
「……えぇ」
「テレジアさまのお母さまは、なにも分かっておりません」
……でも、告げられた言葉が予想外すぎて。私は目を真ん丸にした。ぽかんと口が間抜けに開いている。
「テレジアさまは、とても美しいですよ」
「……そ、んなの」
「私、テレジアさまと関わってまだ数十分しか経っていません。けど、私、思いましたから。……このお方は、努力されているんだって」
……なんて返せばいいかわからなくて、口ごもった。
最初のコメントを投稿しよう!