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「ちょ、き、聞いてないわ……!」
よく考えれば、それは容易く分かることだったと思う。だって、ラインヴァルト殿下のご厚意でここに居候させてもらっているのだ。彼と会うなというほうが、無理な話。
「ですが、殿下はもう会う気満々かと」
「そ、そんなの……」
ミーナの腕がいいためか、普段よりはまだきれいな私がいる。
……だけど、かといって。……ラインヴァルト殿下に寝起きでお会いするのは、ちょっと無理。
「それに、朝食は共に摂られたいとおっしゃっておりました」
「……うぅ」
そこまで言われたら、断るに断れない。
ラインヴァルト殿下がお腹を空かせていると思うと、私の勝手なわがままを告げるのは憚られた。
ここは、覚悟を決めるしかない……の、だと思い知らされる。
「……わかったわ」
結局、折れることしか出来なかった。
私が若干肩を落としてそう言えば、ミーナは「大丈夫ですよ」という。
なにが大丈夫なのか、私にはちっとも見当がつかない。
「殿下はテレジアさまが大好きですので。……朝からお会いできるとなると、大喜びされますわ」
「……そ、うかしら」
いろいろと突っ込みたいところはあるけれど、今は口を閉ざすことしか出来ない。
「それに、結婚すれば寝室を共にするのですから。……寝起きだとか、そういうことは言えません」
「まぁ、それはそ……」
そうかも。
そこまで言おうとして、私はハッとして口元を押さえた。
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