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そして、ゆっくりと扉を開ける。目の前に広がるのは、きれいな廊下。きょろきょろと周囲を見渡して、部屋の外に出る。
(ら、ラインヴァルト殿下は、いらっしゃらないわね……)
というか、そもそも朝食を共に摂るとミーナは教えてくれたけれど、それは何処で摂るのだろうか?
そんな疑問を抱いてミーナのほうを振り返ろうとすると、すぐそばから肩をたたかれた。
「ひゃぁっ!」
驚いてそんな声が口から漏れる。恐る恐るそちらに視線を向ける。
そこには、輝かんばかりの美しい顔をされた、ラインヴァルト殿下がいらっしゃった。
「テレジア嬢は朝から可愛いな」
彼はそのきれいな顔に満面の笑みを浮かべて、私を見つめる。……心臓が、大きく音を鳴らす。
いたたまれない気持ちが強くて、視線を逸らす。そもそも、朝から可愛いってなんなのだろうか。
……だったら、ラインヴァルト殿下は朝からかっこよすぎる。輝いている。そう思うけど、その言葉は口から出ない。
「か、からかわないで、くださいっ……!」
まず、私が朝から可愛いなんてことない。ミーナのおかげで人前に出ても恥にはならない程度になっているとは、思う。
だけど、堂々と「可愛いわ!」と言えることはない。私にそんなことを言える度胸は、ない。
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