第2話

15/78
前へ
/181ページ
次へ
 そう言おうとして、口を閉ざす。見えたラインヴァルト殿下の表情が、あまりにも真剣なものだったから。  結局、押し黙ることしか出来ない。 「じゃあ、行こうか、テレジア嬢」  そんな私に、ラインヴァルト殿下は手を差し出してこられる。……行くのは多分、朝食の席に、よね。  それがわかっていても、私はほんの少しためらってしまう。彼はその私の気持ちを汲み取ったらしく、笑い声をあげられた。 「朝食の席に行くだけだ。……なにも、変なことをしようっていうわけじゃない」 「へ、変なことって……!」  朝からそんなこと、言わないでほしい。  その所為で、私は言葉を繰り返してしまった。ラインヴァルト殿下は、けらけらと笑われている。 「お望みだったら、そういうこともするが?」 「え……」  ちょっと待ってほしい。このお方、今、なんておっしゃったの……? (そ、そういうことって、どういうこと……?)  頭の中がぐるぐると回る。目を回しそうになる私を見てか、彼は笑った。それはそれは、いい笑い方だった。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1146人が本棚に入れています
本棚に追加