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そう言おうとして、口を閉ざす。見えたラインヴァルト殿下の表情が、あまりにも真剣なものだったから。
結局、押し黙ることしか出来ない。
「じゃあ、行こうか、テレジア嬢」
そんな私に、ラインヴァルト殿下は手を差し出してこられる。……行くのは多分、朝食の席に、よね。
それがわかっていても、私はほんの少しためらってしまう。彼はその私の気持ちを汲み取ったらしく、笑い声をあげられた。
「朝食の席に行くだけだ。……なにも、変なことをしようっていうわけじゃない」
「へ、変なことって……!」
朝からそんなこと、言わないでほしい。
その所為で、私は言葉を繰り返してしまった。ラインヴァルト殿下は、けらけらと笑われている。
「お望みだったら、そういうこともするが?」
「え……」
ちょっと待ってほしい。このお方、今、なんておっしゃったの……?
(そ、そういうことって、どういうこと……?)
頭の中がぐるぐると回る。目を回しそうになる私を見てか、彼は笑った。それはそれは、いい笑い方だった。
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