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その後、私はラインヴァルト殿下に案内され、朝食が用意されているという応接間に向かう。
彼は私が退屈しないようにという配慮からなのか、王城についていろいろなことを教えてくださった。
「あの絵画は、数代前の王が他国の画家に描かせたものらしい」
「あそこに見える離れは、先々代の王が病弱な姫のために造らせたものだ」
ラインヴァルト殿下のお話は、とても巧みで退屈しない。しかも、手慣れたエスコートはぶれない。
……本当に、私にはもったいないほどに素敵なお方だ。
(本当、どうしてこんなにも素敵なお方が私なんかを……?)
考えれば考えるほど、答えは出てこない。どんどん答えが遠のいていくような感覚。こんなことって、あるのね。
そう思いつつ彼についていれば、彼が立ち止まる。そして、側に待機していた従者に扉を開けさせる。
「……わぁ」
自然と声が上がった。応接間の大きなテーブル。そこには、二人分の食事が並んでいた。
その食事は見るからに美味しそうで、ごくりと息を呑んでしまう。ラインヴァルト殿下は、私をじっと見つめている。
「気に入ってくれたか?」
彼が私をソファーに腰掛けさせて、そう問いかけてくる。なので、私は何度も何度も首を縦に振った。
気に入ったなんてものじゃない。私にはもったいなさ過ぎて、恐れ多いほどだ。
「ですが、なんでしょうか。……私には、もったいないです」
小さくそう呟けば、ラインヴァルト殿下が対面の席に腰を下ろされる。そのまま、彼は笑われた。
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