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「どうか、優しくしないでください。本当に、このままでは私は――面倒な女に、なってしまいそうなのです」
このお方に恋い焦がれて、一緒になろうとしてしまう。
だから、今のうちに手酷くしてほしい。優しくないでほしい。
それが、私の願いであり、唯一の望みだ。
「……それは、俺に恋してしまいそうっていう、意味?」
彼が真剣な声音でそう問いかけてこられる。……少しして、頷いた。
「ですから、どうか――」
どうか、優しくしないでほしい。
そう言おうとして、言えなかった。ラインヴァルト殿下が、「嬉しい」って言葉を口にされたから。
「それ、本当に嬉しい。……俺のこと、好きになってほしい」
「……は?」
「じゃあ、もっともっと、優しくする。……あんたが惹かれるまで、いや、惹かれても、やめない」
……どうして、そんなことを。
そんな気持ちは、言葉にならない。彼の私を見つめる目が、あまりにも優しいから。
「テレジア嬢のこと、一生放すつもりないから」
彼のそのお言葉に――私は、ただ口をぽかんと開けてしまうことしか出来なかった。
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