第1話

7/22
前へ
/181ページ
次へ
「……どう、すればいいの」  小さくそう呟いて、目を伏せる。  周囲の喧騒が遠のいていくような感覚だった。まるで、私一人だけがこの世界から切り離されたような。  どうしようもない、感覚。  目を瞑れば、お父さまの無の表情。お母さまの失望したような表情。お兄さまの呆れたような表情が、浮かんでくる。 「私、本当に期待外れなんだわ……」  小さくそう呟いて、ぎゅっと手を握る。  物語の中ならば、ここで誰かが助けてくれるんだろう。……かといって、ここはそういう物語の世界じゃない。  だから、私は――このまま、自然と忘れられていく。誰の目にも留まらない雑草のように、消えていくんだ。  そう、思っていたときだった。 「大丈夫か?」  誰かが、私に手を差し出して、そう声をかけてくれた。  驚いて顔を上げる。……そこには、美しい銀髪の貴公子が、いらっしゃった。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1098人が本棚に入れています
本棚に追加