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それからしばらく時間が経って。
誰かが、私の側に立つのがわかった。その誰かは私の身体に上着をかけてくれて、「風邪引くぞ」と言葉を発した。
「……ラインヴァルトさま」
その人物のお名前を口にすれば、彼は「あぁ」と端的に返事をくれた。
そして、彼の手が私の肩に触れようとする。……咄嗟に、振り払ってしまった。
「テレジア?」
視界に入った彼の驚くような顔が、私の心臓をぎゅって締め付ける。
でも、彼に優しくされたくなかった。だって、優しくされたらもっともっと苦しくなってしまうだろうから。
「……ごめんなさい」
小さくそう言うのが、精一杯だった。
震える声で謝罪をする。ラインヴァルトさまの手が、宙を彷徨っているのがわかった。
多分、私に触れていいものか思案されているのだろう。
「テレジア。なにか、嫌なことでもあったか?」
彼がそう問いかけてくる。……嫌なことが、あったかどうか。
それは、私にもよくわからない。ラインヴァルトさまがほかの女性と親しくされていて、それがほかでもないコルネリアさまで。挙句、王妃殿下もコルネリアさまのことを認められていて……。
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