第2話

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(とりあえず、お部屋に戻ってお茶でも飲もう。……少し、心を落ち着けなくちゃ)  そうじゃないと、もっとひどい言葉を彼に浴びせてしまう。それだけは、とてもよくわかって。 「テレジア!」  ラインヴァルトさまが私の名前を呼ぶ。……けれど、立ち止まれなかった。振り返ることも、出来なかった。  私は彼にとって、一体なんなのだろうか? (周囲に認めてもらえない。そんな私が、彼の婚約者なわけがない)  彼は「好き」だと言ってくださる。たくさん愛を与えてくださる。  だけど、いいや、だからこそ。  ……私は、浅ましくも求めてしまう。  ――彼の愛が、私にだけ向けられればいいのに、と。 (あのお方と、私は、全然違う。期待値も、信頼も……背負うものも)  だから、私は。……彼の重荷には、なりたくない。  そう思う。しかし、今の私は何処までいっても彼の重荷でしかないのだ。  そんな私に、彼の側にいる資格なんて――ない。
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