第2話

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 そもそも、婚約破棄されたときから、薄々修道院に行こうとは思っていたのだ。  遅かれ早かれ、そうなるのは当然だった。 「一旦お屋敷に戻って、修道院に行く意思をお伝えしましょう。……今までなにをしていたのかと責められるだろうけれど、ここに居続けるよりはいいわ」  そうだ。ここで、ラインヴァルトさまとコルネリアさまの仲睦まじい様子を見せつけられるより。  一時的にきつい言葉を浴びせ続けられるほうが、ずっといい。  一瞬だけ激しい苦しみに襲われるか、長い間緩やかな苦しみに締め付けられ続けるか。  そんなもの、絶対に前者のほうがいい。 「そうと決まれば、お部屋に戻りましょう。荷造りをして、出て行く準備をしなくては……」  そう呟いて、ベンチから立ち上がる。そっと息を吐いて、吸って。  私は、この王城で滞在させてもらったお部屋に向かうことにした。せめて、少しの後片付けはしたいな。  のんきにそう考えていた私。だけど、それは叶わない。 「……ラインヴァルト、さま」  私のお部屋の前に、ほかでもないラインヴァルトさまがいらっしゃったから。 (どう、しよう)  彼は扉の真ん前の壁に陣取っていて、彼の視界に入らずにお部屋に入る術はない。 (一旦、戻りましょう。……ラインヴァルトさまには、いつまでも私を待ち伏せている時間などないもの)  王太子という立場を持つ彼は、ずっと私に時間を割くことは出来ない。  それが、今は本当に幸運だと思う。  もちろん、最後にご挨拶をすることは必要。けど、それは……うん、荷造りが終わってからでも、大丈夫。
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